海外でのいいニュースもある。2010年2月10日を初日に、ハイデルベルクの劇場が第八作《愛怨》のドイツ初演を日本語(ドイツ語字幕)でやる。それもなんと夏までに10〜15回上演するという。2006年新国立劇場での世界初演の折り、ドイツの有名なオペラ誌“Opernwelt”が取材に来て、それに載った批評を見たハイデルベルクのオペラ監督がスコアとDVDを入手し、前任者と新任の監督と演出家の3人が"What a beautiful masterpiece !"という感動の言葉と一緒に、どうしても自分たちが《愛怨》のドイツ初演をやりたいと言って来た。
私にとって8連作中5作までが欧米の劇場の自主企画で上演されるという光栄だ。私には資金やスポンサーがないので、海外での上演を、先方の求めというより日本のお金の力でやったということは一度もない。上演回数も合わせて50回近くになると思うが、欧米の作曲家でも自国外でこのようなことは稀だと思うし、生死の話の中で、大きな燭光だった。
ところがその実現には、ヴォーカルスコアにローマ字で歌詞を書き込まなければならない。私の《レクイエム》を歌ったり、その新しい「花の歌」の打ち込みをやった西山雅彦さんの根回しで、難しい打ち込み作業を、合唱経験で私の作品に親近感を持っているという印刷業の丸山尚之という方が、収益無視のほとんどヴォランティアで2ヶ月かかって完成させてくださり、歌詞のローマ字確定や、打ち込んだスコアの校正作業は、私の長い合唱仲間である谷始・本田悟・門田洋子の3人がヴォランティアで分担して完璧にやってくれた。ハイデルベルクのオペラ監督・演出家たちも大感謝!である。