12月と2011年1月には、私の作品ばかり、もしくは三木作品中心の重要なコンサートが2回ずつ行われた。 最初に12月6日に四谷区民ホールで行われた「三木稔 箏作品の夕べ」は、評判になったチラシのユニークな写真に向かって左から、福永千恵子・吉村七重・砂崎知子・木村玲子・石垣清美・宮越圭子という、たくさんいる日本の現役箏ソリストの中でも最高の実力者たちといわれる面々が、誰言うとなく始めたコンサートなのだそうだ。
裏面に同じメンバーがテーブルを囲んで談笑している写真がまたよく、「○○」という、これ以上尊敬に値するニックネームはなかろうと思われるおまけタイトル付きコンサートである。
今回演奏された作品は、原曲が私の下芸大3年生時代のピアノ曲の編曲をはじめ、15年前までと比較的散らばった時期の作品から選ばれ、私が敢えて新箏(にいごと、21絃)の普及のために、委嘱されてもほとんど断ってきた十三絃箏への作品が主体で、それ以外の楽器は[このタイプの括弧内]に書く。
文様I(1967)II(1975)=福永・木村・宮越[十七絃]、竜田の曲(1971)=吉村七重[二十絃]、雅びの歌・雛ぶりの踊り(1971)=石垣[十七絃]・福田輝久[客演・尺八]〜休憩〜絃(いと)の春秋(1995)=砂崎[地歌三味線]・吉村[十三絃]、箏譚詩集第一集〈冬〉(1969)=福永千恵子、三つのフェスタル・バラード(1954)野坂恵子編曲(1975)=砂崎・木村・宮越[二十絃]・石垣[十七絃]
私は一切選曲に関わらず、チケットを売ることもなく、それでお客はほとんど満杯、ホールで顔を合わせるお客様たちはみんなニコニコ、演奏も信じられないくらい好評で、私は神様から素晴らしいお礼を頂いた気分であった。ご馳走様でした。72年宮本幸子さん委嘱で雅びのうたと併せて作曲・初演された雛ぶりの踊りは、1975年にフルートのSeverino Gazellonitoと野坂恵子さんのリサイタルのために、原曲の要素は1/3程度しか使わなかった即興的要素の強いDuet《ひなぶり》として別作品となり、同年中に尺八と新箏(にいごと、21絃)用のヴァージョン?ができ、さらにそれを全体に長2度下げ、コーダの尺八には大改定を加えたヴァージョン?ができ、山本邦山氏と野坂さんが、NHKFMで79年に放送して《ひなぶり》はこのヴァージョン?を指すことになった。フルートでも尺八でも演奏できるこのヴァージョンが、西川浩平氏のCDでの名演奏もあって、普及している。
今回久しぶりに聞いた雛振りの踊りは、リハーサルで聞いていて私自身違和感を感じたが、本番での石垣・福田の演奏がシリアスで素晴らしく、作曲者として、あの頃は清新なアヴァンチュールをしていたのだとの想いが甦り、うれしかった。こういうことは何度あってもいいものだ。皆さん毎年お願いしますね!!!