オペラ紹介と批評

《愛怨》世界初演後に寄せられたメールから(到着順)


★ 舞台の美しさと会場のあまりの熱気に、本当に現実から遠く離れた世界にいるような感覚でした。

★ 今自分が生きている同時代で、このような舞台を見ることができたことを非常に感謝しています。(新聞社文化部記者)

★《愛怨》初演ご成功! おめでとうございます。新国立劇場の創作オペラが初めて熱く燃えましたね。シズカ揚静さんの琵琶秘曲にみんな聴き耳を立てました。安禄山の戦いにもかかわらず、二人の「愛の記憶は輝き続ける」に聞き惚れました。海を隔てて両国を結ぶ愛が、現実に勝ちましたね。三木さんの人間性の勝利です。そして瀬戸内寂聴さんと包容力に包まれて共同制作の困難をうまく乗り切られたと感嘆します。ご病気にも打ち勝たれて、時間との戦いにどんなにか苦心され、堪えてこられたか想像に余りあるところです。本当によかった、三木さんの33年のオペラ集大成が今日稔ったと、心から乾杯します。打ち上げパーティに参加して、揚静さんにもお祝を言いたかった「揚静さんは天才だ、ハートを秘めた真の音楽家だ」と。(オペラ団体主宰者)

★ このたびは、先生のすばらしい作品に参加させていただきまして本当にありがとうございます。記念すべき初演の場にいられたことが幸せです。(出演歌手)

★「愛怨」の大成功、おめでとうございます。うまく言葉では表現できませんが、本当に美しい音楽であり、舞台でした。子供さんたちの心にも、そして大人の心にも深い感動を与える作品は、こういった作品なのだと確信しました。(女性作曲家)

★本日、『愛怨』の世界初演を観させて頂きました。たいへん楽しみにしていたのですが、ほんとうにとてもとても素晴らしかったです。特に、2幕3幕の展開と音楽構成には圧巻で、1時間40分間ずっと引きつけられっぱなしでした。オーケストレーションもたいへんおもしろく、大友さんと東響さんがたいへんいい仕事をされていたのも印象深かったです。それにしても世界初演だというのに、キャストのみなさんと指揮者があれだけ豊かに音楽的な流れを作っているのには驚きでした。ということで、と
ても感動しました。ご成功、ほんとうにおめでとうございます。(中堅作曲家)

★ 三木先生、本当に素晴らしい初演おめでとうございました。ほかの、三木オペラに係わった身としてはほんの少し残念ですが!最高傑作ですね。一緒に参りましたオペラを最高の人生の趣味とするかたもそうおっしゃっていました。ごゆっくりと、お休みくださってまた新しいチャレンジをなさって下さい。(筝演奏家)

★ 《愛怨》の成功を心からおめでとうと申し上げます。三木さんの執念の結実です。それはまた今までのキャリアの結実でもあります。美しいメロディ、美しい日本語、それこそが今まで新国で上演された日本のオペラでもっとも欠けていたことだと思います。日本語を変なアクセントにして歌う曲作りが日本のオペラからファンを遠ざけてしまっていました。やっと、ほんとうにやっと、美しいアリアを持ったオペラが誕生し、それを同時体験で視て、聞くことができたことをとても幸せに思っております。一つの大きな山を越されましたが、これが終点ではありません。今一つ、現代をテーマになさってください。(著名な音楽写真専門家)

★ オペラ《愛怨》のご成功を心からお喜び申し上げます。昨日、夫婦で鑑賞し、感激いたしました。三木節はますます生き生きと、情熱に溢れていました。歌手のみなさんや、取り分け琵琶の演奏は大変素晴らしいものでしたし、簡潔ながら工夫された舞台で、総合芸術として堪能させていただきました。(北大グリーで三木《レクイエム》経験者)

★ 何よりも感動したのは、日帰りできる距離になった今日でも、先人たちの努力や文化の入ってきたルーツを忘れることなく、それをステージで再現しようと思われ、しかも、観客の中国人の気分にまで気を配ってくださった三木先生のご努力ぶり、それから、大勢の観客がこのストーリーに魅了して感動したことです。自分もこんな中に身を置くことができまして、夢みたいな気分でした。(《愛怨》台本中国語版翻訳者)

★ 今までに経験をしたことのない素晴らしい感激を有難うございました。(出版業者)

★ 「愛怨」世界初演の名舞台を拝見する栄に浴し、誠にうれしく、ありがとうございます。楽しく麗しく、心に染みる舞台でした。珠玉の集大成、おめでとうございます。(非音楽関係新聞記者)

★ 日本のオペラでこれほどまでに感動したものは、かつてなく8連作の集大成としても相応しく、すっかり感動いたしました。第一作目の春琴抄の成功があったればこそ8連作目の《愛怨》に繋がったのではないかと思います。「日本史オペラ8連作」を読んでいる内に、三十余年に渡る先生のご活躍ぶりが走馬灯のように頭を駆け巡り、只ただ感服いたすのみでございます。正しく快挙であり、日本の音楽界に永遠に印される金字塔ではないでしょうか。(音楽出版社元部長)

★ オペラ、感動しました。言葉がはっきりしていて、ストーリーもわかりやすかったと思います。中国と日本の関係を危惧さている三木先生の思いのこもったアリアも感動的でした。秘曲《愛怨》シズカさんの琵琶はすごいという思いを、また新たにし、感動しました。(自治体文化関係課長)

★ 本当に素晴らしい総合芸術、しかも時空を超えた壮大な人間模様、堪能しました。出演者も皆熱演でしたし、役にはまった配役。舞台も美しく、クライマックスの琵琶の生演奏、これほどの芸術をたのしませていただき、心より幸福でした。私の趣味のつたない歌のピアノ伴奏をよくしてくださるオペレッタを得意とするピアニストをお誘いしましたが、その方も大変感動されていました。再演まちがいなしなのではないか、とも。私は、美しいアリア、合唱の数々、是非スコアを拝見したいとおもいました。(歌を歌うキャリアウーマン)

★ほんとに偉業を達成されたと思います。病に打ち克たれたのは情熱と自分と日本のオペラ界への責任感なのかとも思います。
意志の力の強さ、素晴らしさ、そして先生のやわらかな優しいお心ゆえとも思っています。楽しめるオペラでした。日本語で中身のわかるオペラのありがたさ。8連作を、全部見たいという人の願いが簡単にかなえ
られたらいいのにと思います。(ミュージアム専門員)

★ 今回の《愛怨》が、日本史オペラ8連作の最後を飾る大作であるということ以上に、私は、これほどまでに観客にわかりやすい表現を目指されたことに驚愕しております。特にあの柳玲の「幼い頃、父や妹と別れ」のアリアは、オーボエの静かな伴奏と相俟って、思わず涙があふれてきました。これは、秘曲《愛怨》の琵琶のソロにもいえることかもしれません。孟権が途中で入り込んでから後のオケのサポートは特に素晴らしく、ここに初めて洋の東西を問わない「音楽」の完全なる一体化を具現化させたのではないかと、感動で身が震えました。そのほかにも感動は後を絶たないのですが、私は、「桜子」「浄人」「柳玲」などに代表される名前に付けられた音型(IDセリー)に目を見張りました。「名」の持つ神秘性・呪術性は、つとに中国古典などでも話題となっていたところですが、《愛怨》では、その意味合いがさらに洗練されていたと感じているのです。桜子が猿沢の池に身を投げた後の「桜子」の合唱は、特に衝撃的でありました。入浴シーンの絶妙な掛け合い、静と動のコントラストを際立たせた表現も素晴らしく、今回のオペラでは、決して前面に出てはきませんでしたが、合唱の効果は特筆ものであったと思います。遣唐船の難破シーンの観音経のボーカリーズ然りです。《愛怨》の中に鏤められている旋律は余りに自然で美しく、音楽に詳しい家内も心底から驚愕し、「やっぱり三木先生の音楽は全然違うのね」と言っています。二人とも、できればなんとしても繰り返し聴きたいものと切望しておる次第です。(官庁勤務で芯からの音楽ファン)

★最後に先生が舞台に立たれた時、信じられない偉業に対するあまりの感動で涙があふれて止まりませんでした。その快挙に遭遇できたことは誠に幸せであり、わたくしもその8連作の一端に参加できたという事をあらためて誇りに思い、今もなお涙しています。わたくしが言うのもおこがましい事でありますが、8連作という前人未到の快挙を成し遂げられたその執念信念への尊敬と情熱を持ち続け常に熱く御自身には過酷と言えるほどに厳しい生き方をしておられるに関わらず、他の人へのなんともお優しい大きな大きな心つかい、おごらない態度、そうした先生の生き方とそれにより生まれでた作品に心より尊敬の念を抱いております。作品にたいしては、10才の娘がはじめてオペラを観ましたが、遣唐使、琵琶、乳兄弟などはじめて聞く言葉もあるためわからない部分も多いかとは思ってありましたがその娘に「オペラっておもしろいね、また観にゆきたいな」と言わしめました先生にお会いできた事にも、瀬戸内寂聴さんに「おいくつなの?おもしろく観られた?」と運よくも話しかけていただき、握手もしていただいた事にも感激した様子です。わたくしはなにもかもを超越したかのごとく研ぎすまされた崇高な敬虔な作品に心を洗われる思いで堪能しました。命のかかった調べとはこういうものなのか、、、と。心に沁入ってきました。それでいてお話の展開も舞台の転換もテンポよく、台本も分かりやすく言葉も明瞭で、愉快痛快な箇所も随所にちりばめられていて3時間は瞬く間でした。初日に観にいかなかったことを後悔しました。なぜならば終わったあとすぐに、もう一度観たくなったからです。3回とも観たかったと思うくらいです。昨年の9月、じょうるりを観られて半年立たずに愛怨を観る事ができてそれは幸せです。
願わくば 春琴抄、あだ、ワカヒメ、静と義経 はまだ観ておりませんのでそれを観たいなあと思います。また隅田川/くさびらの再演も願ってやみません。先生、どうかくれぐれもお体を大切になさっていつまでもお元気でいて下さい。会場で購入したパンフレットと日本史オペラ8連作その詳細と作曲者ノートを繰り返し繰リ返し読んでおりますが、地球交響曲、究極の平和を祈願するオペラ!!の完成をずっと祈って心より応援しております。(組オペラの合唱を歌った歌手)

★ 《愛怨》の成功おめでとうございます。
他の仕事と完全に重なって涙、涙でした。こんな不幸にみまわれようとは!再演があることを信じるしかありません。一ヶ月ほど前から某団体のシリーズ企画で何本かの邦人作品に取り組んで、数人の友人共々ストレスが溜っています。「こんなことで良いのだろうか」と疑問を感じることばかり。皆で夜食を食べながらさんざん愚痴った後に全員が同時に叫んだのが次の言葉。「結局、三木稔がいかに偉大か、ってことが今回、よくわかったよね。《プロの作曲家》って、いそうでいない、とわかったことを今回の収穫としよう」。その《某団体》の企画には本当に「何分何十秒吐く」と楽譜に指示のあるような曲(?)もありますが、この類を《現代曲》と思う感覚は1960年代のアングラ芝居っぽくて、私にはむしろ古くさく感じられます。
「今回《愛怨》に関わって、新しいとは何か、を考えさせられた」と、合唱団員の一人が言っていました。私が三木先生を存じあげていることを知らない人なので、本音です。長くなりますが以下に書きます。
実は最初に譜面を見た時、「何これ?今の時代にこれを?」と思った。ところが練習して行くうちに、奥は深いし楽しいし、メロディーはきれいだし一同すごく盛り上がって稽古した。今まで新国でやった邦人作品の中で、再演するとしたらこれだ、って皆言ってる。出が多いしメークが変わるから全く休憩がとれないで重労働だけど、またやりたいし、お客さんにも聞いて欲しい。終わってから、舞台で使った花を持って行っていいって言われた時、「ということは、すぐには再演はないの?」と悲しくなったほど、好きな作品だった。一見ごく普通の、いわゆる「時代がかったオペラで相も変わらぬ三木メロディーかなぁ」と思われる譜面から、どんどん不思議な新しさが出てくる。練習すればするほど新たな発見がある。唐突で強引と思われる筋の運びすら、やってみると自然に流れる。今の時代に必要な《新しい》オペラは実はこれ、と感じた。・・・以上です。(オペラコレペティ暦数十年のピアニスト、三木作品でも数回)

★ 三木先生のオペラの世界初演にあのような素晴らしいメンバーで参加させていただきましたこと心より感謝いたします。三木先生の作品に対する情熱と愛情は稽古の折から光り輝いておりました。時間の限られた稽古の中で新作というのは大変なことだと思いますが、《愛怨》は僕のお客様がたは大満足、涙を流されたという話をたくさん聞きました。是非皆さんとあらためて一席話し合いたい!!(出演した歌手)

★ 去る2月15,16の両日に開かれたオペラ「愛怨」のゲネプロ公開では、大変お忙しい中を取材に応じて下さり、本当にありがとうございました。そしてまた、三木先生の手掛けられた素晴らしい舞台を何度も拝見できましたことを、とても嬉しく思います。初演が終わった今、「本当にいいものを見せていただいた」との思いが日増しに強くなっており、心からお礼申し上げたいと思います。
ゲネプロ公開の際に録った舞台録音を、本公演後も何度もわが家で聴き返しました。実は、ゲネプロ公開と初日(2/17)の舞台取材を通じてすっかり三木オペラに魅了されてしまった私は、妻にもこの歴史的な舞台を見ておくよう強く勧め、妻も最終日の19日に舞台を拝見させていただきました。それからというもの、わが家では何度もこの録音が再生され、「ホントにいいオペラだったね」という会話が繰り返される一方、妻がアリア調で話し掛けてくることも時にあり(笑)、三木オペラのインパクトたるや凄いものだと感じております。この録音を聴いていてあらためて思うのは、音楽の持つ力、そして三木先生の表現力です。舞台を直接見ることができなくても、場面転換がなされたことや舞台の臨場感、緊迫感が音楽だけで容易に想像でき、台詞への音楽の乗せ方も見事だと思いました。
さらにまた、柳玲が秘曲「愛怨」を浄人に伝授したことを孟権に告発された折、毒をあおった柳玲に浄人が叫ぶアリアがゲネプロ公開の時から強く印象に残りました。「この国はわたしを取り立てようとしてくれた/命をかけて愛してくれた柳玲のいる第二の故郷/わたしもここで共に死んでゆく」という言葉です。台本は寂聴先生となっておりますが、あのアリアこそ、まさに三木先生の思いが詰まった言葉ではなかったのでしょうか。現在の中国と日本との政治的関係に思いを致すとき、この浄人の言葉には強く胸を打たれ、涙が出る思いで聴き入りました。
三木先生の素晴らしい音楽、楊静さんの息をのむ琵琶演奏、鍛錬された出演者の歌と演技、舞台にメリハリをつくる新国立劇場合唱団の見事な合唱、どれもこれも「一流とはこういうものか」と感嘆させていた
だいた舞台の初演に立ち会うことができ、こんなに幸せなことはありません。三木先生におかれましては、お身体にはくれぐれもご留意され、第9の「昭和史オペラ」完成の快挙を成しとげられるよう、切に祈っ
ております。このたびは本当にありがとうございました。(取材した新聞記者)


三木 稔