オペラ《あだ》1979年ロンドン世界初演評より(常俊明子訳) |
ロバート・ヘンダーソン <デイリー・テレグラフ>
オールド・ヴィック・ホールにオペラが凱旋した。端正で知的で奥ゆかしい。西洋と東洋の融合と云うだけでは充分ではない。ゆったりとした、しかし有無を云わせぬ整然とした力強さ。オペラを包み込んでいる伝統は正しく表現され、全ての仕草を雄弁に語る音楽。不要なものを削ぎ落とした非常に精巧なイデイオムは、凶暴と云ってもいい力と極限に達した情念を、強烈な形で調和させている。
ユーゴ・コール <ガーデイアン>
ジェームス・カーカップの優れた台本は、無邪気で率直で、ラプソデイと云うよりエピグラム的な詩が連なる。三木の音楽は歌の声を遠巻きに包み込む。アンサンブルは殆ど無い。歌は大体において滑らかな順次進行のスタイルで、時代や国を問わずみられるものだ。アクセントの置き方と言葉の配置は、ブリテンのオペラのやり方を参考にしたと思われるが、規則的なパターニング、もしくはテーマの展開が無いところに、既知の西洋音楽の範疇を超えたものがある。三木稔は誠に天賦の才能を持ったドラマテイックな作曲家だ。
ブリジット・シーファー <コンタクト>
擬東洋音楽だとか、東洋を彷彿させるとか、東洋的雰囲気があるとか、そんな表現で済ますわけにはいかない。メリスマ的要素とリズミックな表現を結び付けた実にモダーンな音楽形式で、舞台上で歌手の声が乗ると真に素晴らしい効果がある。これは、とうの昔に役目を終わってしまってはいるが、実は遠い東洋音楽の品質証明であったはずだ。・・・
相容れないはずの諸々の要素の融合に気づけば、私がこの音楽に強烈に心奪われ、東と西の音楽が和解に向かう新たな道を確かに感じた音楽経験をした、と述べさせてもらっても誇張とはなるまい。
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