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2003.4
2003年3月 のメッセージ集
世界初演以来6年ぶりに私の《琵琶協奏曲》の中国初演が3月2日北京の保利劇場で行われました。中国琵琶は勿論シズカ楊静、そして成長著しい中国フィル、指揮は若くして高度な感性とテクニックを備えた楊洋(やんやん)で、「あまたある琵琶協奏曲の最高峰」との光栄な評価を受けました。英文のインタービューもどうぞ。
私が1986年に主宰して創立した歌座が、経済的困難を乗り越えて21世紀に奇蹟的に再生し、東京では昨年12月3日〜5日にこまばエミナースで9年ぶりの自主公演を、フォークオペラ《うたよみざる》の、230回に達する上演として行いました。この老若男女誰でも受け入れられる稀有な舞台は、リピーターの感動も多く、まだ知らない方々のためにも度々上演してほしいという内外の声に答えて、毎年師走の名物にしようと今年も一般公演を決めました。また、三木オペラを毎年上演していこうと意気込んでいますが、よく準備して04年から始めます。
昨年秋、アジア民族楽器のトップソリストたちによるアジア アンサンブルを、私の創立するおそらく最後の、取っておきの団体としてスタートさせました。アジア アンサンブルは、私も企画に関与して10月1日〜4日に岡崎市で行われた「アジア・シルクロード音楽フェスティバル」の最終日に、日を追って盛り上がっていた聴衆の関心に応えるように登場し、この楽団のための最初の作品として夏の間に作曲した日中楽器の五重奏曲《Origin》を最終曲目として初演しました。
アジア アンサンブルは、今年は9月から10月にかけて仙台・宮崎県・岡崎・東京での「アジア・シルクロード音楽フェスティバル」で、日中の若い作曲家たちへの委嘱新作も含め、魅力あるレパートリーを構成しつつツアーをしますが、協力を申し出る内外のプロモーターも多く、先行きが楽しみです。
オーラJの第11回定期演奏会は昨年11月8日津田ホールで、「私たちは二度と戦わない」というテーマ行いました。私たちの世代が、若い世代と共に伝えていかねばならない問題であると確信する私が、芸術監督として確信を持って企画したコンサートでしたが、このテーマのためにチケットが売れないとか、ネガティブなことが多く大変でした。しかし結果的には8割近い聴衆を得、出品者の力作も揃い、在日中国・モンゴルの民族楽器奏者・アメリカ人指揮者を合わせた華やかな演奏陣の力演できわめて満足の行くコンサートになったようです。
  私の《黄の鐘・抄》《Origin》(オーラJヴァージョン)が演奏されました。ソプラノ(宇佐美瑠璃さんが力演)の歌うテキストを持ち、古代からの日本女性史の側面も併せ、母の立場で描いた《黄の鐘》の最後の部分は、軍隊に取られた息子が、上官の命令で虐殺に加わり、連合軍に死刑に処せられた惨酷な問題を訴えています。聞いた方々からは多くの共感やご意見を得ましたが、来場を避けた人たちに、音楽によるアピールをどういうふうにして行えばいいのか、皆さん教えてください。
オーラJは、今年も在日アジア演奏家との積極的な共演を行います。定期演奏会は津田ホールの協賛公演として6月と来年3月に企画中です。
昨年4月津田ホールで私の室内楽特別演奏会として行われた「楊静結アンサンブル」で、琵琶・ヴァイオリン・チェロ・マリンバ&打楽器の四重奏曲《東の弧》を初演しました。楊静・三木希生子・橋本しのぶ・臼杵美智代の4人はその《東の弧》を持って第4回大阪國際室内楽フェスタに参加、世界中の126団体から選ばれて「フォルクロア特別賞」を受けました。今年は7月に京都と愛媛・香川(よんでん文化振興財団派遣助成)にツアーします。
今年は、私の筝作品の出版作業が続きます。中国の人民音楽出版社が年末までに二十絃(21絃)作品の殆どを出版、龍音公司がそれらを中国最高の筝奏者の演奏でCD化します。日本では、私が30年も前から着手して途中で止まっていた初心者のための《筝初音集》を書き足し、縦譜も併せて出版する予定です。具体的なことは後ほど書きます。
源氏物語》作曲中から構想してきたオペラ第8作の台本が今年半ばには届くと思います。腕を撫して待っています。
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次の小さな歌を今年のご挨拶代わりにお届けいたします。合唱のために2年前から書いていた「折々の挨拶歌」の3つ目のメロディーで、一年前に合唱として作曲したのですが、お別れの「さようなら」は、時に淋しい意味合いもあるので《あしたまた》と言いたいと思い、妻に詩を書いてもらいました。一年経って "See you again" と歌い変えるとぴったりだと気がつき、自分なりに英語版を作り、《あだ》《じょうるり》《源氏物語》の台本や演出で長年の相棒であるコリン・グレアムに送って2小節目と8小節目を直してもらいました。私のシリアスな作品のスタイルとは違った、普通のメロディーラインです。そのうちに音も聞こえるようにしようと思っています。
ピアノ伴奏の付いた楽譜をお望みの方は、メールを下さればお送りします。

三木 稔